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特集:植木等生誕100年企画 「お呼びでない?お呼びでない、ね。こりゃまた失礼しました!」と昭和を駆け抜けた無責任男・植木等の〝とっておき〟の話


 前編では、義理堅き、そして心優しき〝無責任男〟植木等の実像を述べさせていただいた。実際、筆者はそうした植木さんしか知らないのだが、いろんな人とお話ししていると、また違った一面が見えてくるのも事実。はっきり言えば、「厳しい人」というイメージである。

 植木さんは砧の自宅からも程近い、祖師ヶ谷大蔵駅前の「ひつじや」という店で帽子をあつらえていた。ここのご主人は、黒澤明のマリンキャップや円谷英二のソフト帽なども請け負っていた名職人。その方に聞いた植木評はこうである。

 
 「植木さんはとても厳しい人でした」

 雨に濡れてズボンの折り目が消え、「煙突のようになるのが嫌だった」とよくおしゃっていたオシャレな植木さんだけあって、帽子にもこだわりがあったのだろう。晩年まで、ご主人に帽子のアップグレードを頼んでいたというから、デザインや被り心地に相当な注文をつけていたことは間違いない。
 事実、最後の付き人・藤元康史さんも「普段は贅沢をしない植木さんですが、服に関してはこだわりがあり、うるさいところがありました」と語っており、自宅二階の巨大なクローゼットには大量のオーダー・スーツが収納されていた(※1)。


「アイデアル」傘のCМや「植木等ショー」などのテレビ番組を共につくった砂田実さんも、自著で植木さんの厳しい一面を明かしている。
 本来ならご自分が書くはずだった『植木等伝 わかっちゃいるけど、やめられない!』(代わりに執筆したのは戸井十月)の取材で、二人して故郷の三重に訪れたとき。仕事を終えて食事をしていると、若い仲居さんが立ったまま料理をテーブルに置く――。
 ここで植木さんが発したのは次なる一言だった。


「立ったままで皿を置くとは何事だ!?」

 これは大正生まれで礼儀作法を重んじる植木さんならではの〈戒め〉なのだろうが、筆者には全く見せたことのない厳しい態度である。
 長年付き人を務めた藤元さんの「ぼんやりしていようものなら、共演者や関係者の前でも鋭い叱責が飛んできたものです」との述懐からも、植木さんの厳格さが強く伝わってくる。

 砂田さんが目撃した〈叱責〉場面はもうひとつある。

 
 こちらは「パンシロン」CМ撮影時のこと。ADが「お静かに」と注意を与えたにもかかわらず、参加のエキストラたちはワイワイがやがやと、おしゃべりを止めない。
 すると植木さんは、「お前たちはここに遊びに来たのか、仕事に来たのかどっちだ?」と一喝。スタジオは水を打ったように静まり返る――。


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