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篠井英介に職業俳優の女方として生きていく覚悟を決めさせたというテネシー・ウィリアムズ『欲望という名の電車』のブランチ役に四たび魂を賭けて挑む

 2001年9月、東京・青山円形劇場で上演された『欲望という名の電車』で、主人公のブランチを演じたのは篠井英介だった。テネシー・ウィリアムズの最高傑作とも言われる戯曲で、1947年にブロードウェイで初演され、51年のエリア・カザンによる映画では、ヴィヴィアン・リーがブランチを演じた。舞台でスタンリー役を演じたマーロン・ブランドが同役での映画デビュー作としても知られている。日本の舞台では、ブランチを当たり役として、文学座の杉村春子が長年にわたり上演を続けたのをはじめ、浅丘ルリ子、水谷良重(現・二代目八重子)、岸田今日子、栗原小巻、樋口可南子、大竹しのぶ、沢尻エリカら多くの女優たちがブランチを演じている。

 テネシー・ウィリアムズは、映画化や上演にあたり、「女役は女優を、男役は男優を配役し、女形、男役はだめだ」と遺言している。その遺言を覆したのが2001年に篠井英介をブランチに配役した公演だった。実は92年に篠井のブランチで上演が予定されていたが、一旦は上演許可がおりたものの土壇場で当時の著作権継承者から上演許可が撤回され中止になった。

 だが、篠井をはじめとする公演関係者はあきらめきれず、約10年にわたり交渉を重ね、上演を実現させた。『欲望という名の電車』に対する、篠井英介の執念にも近い思いの深さが、芸術文化の新たな扉を開いたのだ。ここに、世界初、唯一無二の〝女方〟によるブランチが誕生した。

撮影:引地信彦

 
 篠井は映画やテレビドラマなどでは、おだやかな好人物や癖の強い敵役などで、作品に確かな存在感を刻み込んでみせている。一方、舞台では、約40年もの間、女方という独自の芸を確立させ、唯一無二の存在として第一線で活躍を続け、演劇ファンを魅了し続けている。〝女形〟ではなく〝女方〟と呼称するのは、形ではなく、精神や技術などにひとつの方向を持っているという思いの反映である。ブランチを演じる上で影響されたのは、杉村春子の舞台と、ヴィヴィアン・リーの映画だったという。

 

 アメリカ南部の裕福な家柄に育ったブランチだったが没落し疲弊し、ルイジアナ州ニューオリンズに妹・ステラを訪ねる。そこで、ステラとその夫・スタンリー、そしてブランチとの奇妙な共同生活が始まる。上品ぶったブランチと粗暴で 直情的なスタンリーとはあらゆる点でぶつかり合う。スタンリーはブランチのことを怪しみ、過去や周辺を探り始める。そんななか、ブランチはスタンリーの同僚ミッチとの出会いに、新たな規模を見い出しつつもあった。だが、小さな貸家での暮らしは軋みはじめ、決定的な亀裂となる出来事が起きてしまう。行き場を失うブランチの末路は……。

 現在、東京芸術劇場 シアターイーストで、2001年、2003年、2007年に続く篠井英介4度目となる『欲望という名の電車』が19年ぶりに上演中。東京・大阪公演ともにチケットは即完売という人気ぶり。追加公演も完売しているが、当日券という手立てがある。

 今回スタンリーを演じるのは2001年と2003年の公演にミッチ役で出演している田中哲司。ちなみに、過去3回のスタンリー役は、加勢大周、古田新太、北村有起哉だった。ブランチの妹・ステラ役には『きらめく星座』、『グッバイ!レーニン』、『奇ッ怪 小泉八雲から聞いた話』などの舞台が記憶に残る文学座の松岡依都美、ミッチ役は串田和美、岩松了、長塚圭史、森新太郎、小川絵梨子、上村聡史、ジョナサン・マンビィなど多彩な演出家の作品への出演が続く坂本慶介という布陣。

 今回がラストのブランチになるかもしれないと呟く篠井英介からのコメントが届いている。「いつも夢に見ていた『欲望という名の電車』四度目の上演! その幸せ! めぐり合わせとタイミングは演劇の神様のおかげ。女神に微笑んでいただけるような舞台を、キャスト・スタッフの仲間たちと共に創り上げます。ぜひお出かけください。」

 
 この言葉からは5回目のブランチも期待できると信じているが、まずは4回目となる今作で、「ブランチという役を演じている時、無上の、生きている実感があるのです」という篠井=ブランチの目撃者になりたい。


吉住モータース presents
『欲望という名の電車』
作:テネシー・ウィリアムズ
翻訳・演出:G2
出演:篠井英介 田中哲司 松岡依都美 坂本慶介
   宍戸美和公 森下創 ぎたろー 平井珠生 松雪大知 吉田能

<東京公演>
〔公演日程〕3月12日(木)~3月22日(日)
〔会場〕東京芸術劇場 シアターイースト(東京都豊島区西池袋1-8-1)
〔問〕吉住モータース03-5827-0632(平日11:00~18:00)

<大阪公演>
〔公演日程〕4月4日(土)~4月5日(日)
〔会場〕近鉄アート館(大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス近鉄本店ウイング館8階)
〔問〕吉住モータース03-5827-0632(平日11:00~18:00)



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