21.12.22 update 映画は死なず

第5回 続・セールス四方山話 風雲篇

 また、北海道の中でも小都市の小さな直営館では、かける映画がないという状況が出てくる。封切で5週間興行なんて言っても、北見東映など、人口が10万人規模の地方の街の映画館では、5週間のロングランなんかできない。そうすると私の出番になった。『山口組三代目』特集の登場となる。それにポルノ映画大会。「痴漢大会」「女医大会」「団地妻大会」、それに結構客が入ったのが「女教師大会」だった。オールナイトだけでなく、1週間通常上映などもしたくらいだった。封切映画上映が5週間もたないのに、それに代わって上映できる新作映画の準備がなかったのだ。そうは言ってもブロックブッキングの時代だから、映画館に映画を提供しなければいけなかった。ずっとデータと向き合う仕事をしていたから、他社の映画会社の数字なども調べて、この映画とこの映画を組み合わせると面白いなとプランニングする。映画館にいかに黒字を出してあげるか、それが商売だったのだ。最終的には北海道支社のセールスは私一人だったから、私が全部やらなければならなかった。北海道のセールスを一手に担っているという責任も大きかったが、楽しかった。

 函館に昔気質の方が館主をやっている洋画系の映画館があった。洋画に関しては東映は新参者だった。週ごとに請求書を出していたが、220万円の未集金があった。担当者が退職していたので、その映画館に私が集金に行くことになった。最終的に決着がついたのが、半額にするからという提案で、110万払ってもらうというものだった。半分倒産しているような会社だったから、それでも先方は払えないと言うので、じゃあ手形を出してもらうということで20万円の手形を5本切ってもらい、帰ってきた。減額でアジャストしたことを本社に報告しなければならなかった。不渡りにならなかったことに安堵した。1年間未回収だったのが半額とは言え倒産しかけているような会社から集金できたのだから、よくやったということになったのだが、事務所に単身で乗り込むにはやはりそれなりの覚悟が必要だった。社長と奥様と番頭さんの3人しかいなかったが、眼光鋭くどこか威圧するような感じがあって、怖かった。まあ、任俠映画宜しく目出度く手打ちと相成ったというところである。

二代目社長・岡田茂が『ゴッドファーザー』を観て気に入り製作を思いついたという『山口組三代目』。公開は1973年で、『仁義なき戦い』シリーズの第3作『仁義なき戦い 代理戦争』と同じ年に公開されている。山口組三代目組長・田岡一雄の自伝をもとに作られているが、実話としての生々しさはないものの、『仁義なき戦い』を上回る記録的な大ヒットとなった。なにしろ実存する組織と組長が実名で登場するという前例のない映画だけに、映画ファンのみならず、タイトルに惹かれて映画館へ足を運んだ観客も多かったことだろう。監督は〝任俠映画〟時代の多くの名作を誕生させた山下耕作で、高倉健が若き日の田岡一雄を演じた。丹波哲郎、松尾嘉代、桜町弘子、水島道太郎らも出演しているが、健さんと菅原文太との雪の対決シーンが話題になった。©東映

1 2 3

新着記事

  • 2026.03.16
    篠井英介に職業俳優の女方として生きていく覚悟を決め...

    東京・大阪公演

  • 2026.03.16
    ちょっと贅沢な箱根温泉の〝日帰り旅〟の一日は《箱根...

    応募〆切:5月10日(日)

  • 2026.03.16
    中村雅俊、秋野太作、田中健、岡田奈々「俺たちの旅」...

    追加公演決定!

  • 2026.03.13
    東京芸術劇場初代芸術監督 野田秀樹の公演活動を振り...

    3月24日(火)~31日(火)

  • 2026.03.13
    箱根〈彫刻の森美術館〉の新コレクション、草間彌生の...

    4月19日~11月1日

  • 2026.03.13
    【お出かけ情報】参加費無し、いつでも参加できる、縛...

    京成グループ沿線ウォーキング

  • 2026.03.12
    【お出かけ情報】心ときめく春のご褒美、ホテルのアフ...

    贅沢なお出かけ!

  • 2026.03.12
    美人薄命─昭和の歌姫・本田美奈子はデビュー曲の「殺...

    本田美奈子「殺意のバカンス」

  • 2026.03.11
    「京成ドリームトレイン」子どもたちの夢を乗せて快走...

    子どもたちの夢の詰まった電車

  • 2026.03.11
    熊本地震から10年、「熊本城―守り継がれた名城40...

    応募〆切:4月5日(日)

映画は死なず

特集 special feature  »

今、時代劇が熱い! 第三弾 主演北大路欣也が語る「三屋清左衛門残日録」~時代劇にはまだまだ未来がある~

今、時代劇が熱い! 第三弾 主演北大路欣也が語る「三...

藤沢周平原作時代劇「三屋清左衛門残目録」の章

松田聖子デビューから45年、伝説のプロデューサー若松宗雄が語る誕生秘話〈わが昭和歌謡はドーナツ盤〉特別企画

松田聖子デビューから45年、伝説のプロデューサー若松...

〈わが昭和歌謡はドーナツ盤〉特別企画

VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いなる遺産

VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いな...

「逝ける映画人を偲んで2021-2022」文=米谷紳之介

放浪の画家「山下 清の世界」を今。

放浪の画家「山下 清の世界」を今。

「放浪の虫」の因って来たるところ 文=大竹昭子

「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

「いい顔」と「いい顔」が醸す小津映画の後味 文=米谷紳之介

人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

わが母とともに、祐三のパリへ  文=太田治子

ユーミン、半世紀の音楽旅

ユーミン、半世紀の音楽旅

いつもユーミンが流れていた 文=有吉玉青

没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、展覧会「萩原朔太郎大全」の旅 

没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、...

言葉の素顔とは?「萩原朔太郎大全」の試み。文=萩原朔美

喜劇の人 森繁久彌

喜劇の人 森繁久彌

戦後昭和を元気にした<社長シリーズ>と<駅前シリーズ>

映画俳優 三船敏郎

映画俳優 三船敏郎

戦後映画最大のスター〝世界のミフネ〟

「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の流行歌 

「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の...

第一弾 天地真理、安達明、久保浩、美樹克彦、あべ静江

故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・木下惠介のこと

故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・...

「つつましく生きる庶民の情感」を映像にした49作品

仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監督の信念

仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監...

「人間の條件」「怪談」「切腹」等全22作の根幹とは

挑戦し続ける劇団四季

挑戦し続ける劇団四季

時代を先取りする日本エンタテインメント界のトップランナー

御存知! 東映時代劇

御存知! 東映時代劇

みんなが拍手を送った勧善懲悪劇 

寅さんがいる風景

寅さんがいる風景

やっぱり庶民のヒーローが懐かしい

アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

60年以上にわたる創造の全貌

東京日本橋浜町 明治座

東京日本橋浜町 明治座

江戸薫る 芝居小屋の風情を今に

「芸術座」という血統

「芸術座」という血統

シアタークリエへ

「花椿」の贈り物

「花椿」の贈り物

リッチにスマートに、そしてモダンに

俳優たちの聖地「帝国劇場」

俳優たちの聖地「帝国劇場」

演劇史に残る数々の名作生んだ百年のロマン 文=山川静夫

秋山庄太郎ポートレートの美学

秋山庄太郎ポートレートの美学

美しきをより美しく

久世光彦のテレビ

久世光彦のテレビ

昭和の匂いを愛し、 テレビと遊んだ男

加山雄三80歳、未だ青春

加山雄三80歳、未だ青春

4年前、初めて人生を激白した若大将

昭和は遠くなりにけり

昭和は遠くなりにけり

北島寛の写真で蘇る団塊世代の子どもたち

西城秀樹 青春のアルバム

西城秀樹 青春のアルバム

スタジアムが似合う男とともに過ごした時間

「舟木一夫」という青春

「舟木一夫」という青春

「高校三年生」から 55年目の「大石内蔵助」へ

川喜多長政 &かしこ映画の青春

川喜多長政 &かしこ映画の青春

国際的映画人のたたずまい

ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

監督と女優の二人三脚の映画人生

中原淳一的なる「美」の深遠

中原淳一的なる「美」の深遠

昭和の少女たちを憧れさせた中原淳一の世界

向田邦子の散歩道

向田邦子の散歩道

「昭和の姉」とすごした風景

あの人この人の、生前整理archives

あの人この人の、生前整理archives
読者の声
Social media & sharing icons powered by UltimatelySocial