PHOTO MESSAGE 2019年10月1日号 ¿Como le va ? Vol.41より

「僕の俳優人生の節目となる、大切な作品になる予感がしています」
2019年2月の『チャイメリカ』に続き、『月の獣』で本年2作目となる舞台に出演します。
第一次世界大戦中に起きたアルメニア人迫害の実話に基づいた作品で、日本人にはなかなかなじみのない舞台設定ですが、時代、民族、国を超えて、家族、夫婦、人の絆といった普遍的なテー マが描かれています。1995年の初演以来、19か国語に翻訳され、20か国以上で上演されている芝居です。
2001年にはフランス演劇界で最も権威あるモリエール賞を受賞しています。日本での初演は15年で、今回と同じく栗山民也さんの演出でした。僕の役は、迫害により家族を失い、 一人アメリカに亡命する青年です。家族とはこうあるべきだというような独自の家族の理想を持ち、写真だけで選び妻としてアメリカに呼び寄せた同じアルメニア人の孤児の少女に自身の理想を強制します。
妻を演じるのは岸井ゆきのさんで、2年ほど前にドラマで共演していて、気心の知れた同志という存在です。雰囲気だけでなく、役をご自身の中でき ちんと消化して演技なさっていらっしゃるような印象でした。今回ご一緒するのに頼もしい女優さんです。夫婦が言葉で互いの存在を証明していこうとするやりとりの中に、それぞれの葛藤が浮かび上がるという会話劇の面白さがあります。おさまりが良すぎないゴツゴツした形のような会話ができればいいなと思っていまして、そのほうが2人の心の関係が際立つような気がしています。
お互いが心地良いと感じるタイミングとか間だけじゃないところも、稽古を重ねる中で発見できると思っています。演出の栗山さんとは、『チャイメリカ』で初めてご一緒させていただきましたが、天安門事件を扱ったその舞台のときに、「その時代にこの事件に関わった何人もの人たちが命を落としている、それを忘れないでほしい」とおっしゃった一言はいまでも強く心に刻まれています。今回の作品のベースにもそれがあると思います。

栗山さんの演出は、とてもスピード感があり、ついていくのに必死です。ただ、自分の中に消化できないことがあったら、その時は素直におうかがいしようと思っています。栗山さんは作品に対する情熱を誰よりもお持ちだという印象で、演者含めてみんなが栗山さんの情熱についていくという感じです。たくさんの演出作品をかかえていらっしゃる中で、一つひとつ大いなる情熱を持って演出なさっていることに、ひたすらすごいなと感嘆するばかりです。
そんな栗山さんが長年大切に温めていらっしゃる戯曲の主役に指名していただけたことは、すばらしく光栄なことだと背筋が伸びる思いです。ここ数年、毎年舞台に立たせていただいていますが、まだまだ経験も少ない中、初めてここまでボリュームのある役ということも含めて、稽古はまだまだ先という段階ですが、今の年齢でこの作品にめぐり合えたことは、僕の俳優人生の大きな節目となるような、とても大切な作品になるのは間違いないと思っているところです。
僕にとって舞台というのは、その日観てくださるお客様の前で芝居をやるということの俳優として重大さを思い知らされる場所です。舞台に立つのは怖いと感じる部分も大きいのですが、舞台に限らず、困難なことに挑戦できるというのは幸せだと思っているので、舞台は僕にとって素晴らしく素敵な困難だと言えるかもしれません。この作品を務めあげた先に、俳優として、どんな景色を思い描くことができるのか確かめてみたいです。間違いなく今までにない挑戦になりますから、見たことのない眞島秀和をご覧いただけると思います。








