interview

2013年ミュージカル『シラノ』にかける思いを語る鹿賀丈史

PHOTO MESSAGE 2013年1月1日号より


ミュージカル『シラノ』にかける思いを語る

撮影:2012年10月18日 フジテレビ楽屋にて /徳増純一郎

「映画やテレビをやっていてもどこかで舞台だけはずっとやり続けていたい。舞台というのは僕にとって最終的な仕事の場ではないかと感じています」

 2013 年はミュージカル『シラノ』の再演でスタートです。『シラノ・ド・ベルジュラック』という作品は成就しない恋の物語ですが、悲しい部分もあればコミカルな部分もあり、感動的なクライマックスも用意されている非常によくできた名作で、今までにも多くの名優の方たちが演じ、日本でも長く愛され続けています。ミュージカル化で大事なのは物語と美しいメロディがうまく一つに溶け合うことだと思うのですが、『シラノ』は数あるミュージカル作品の中でも、作曲家ワイルドホーンによる優しく美しいメロディが強く心に響く作品に仕上がっているのではないかという気がします。

 文芸作品をミュージカルにするのは非常に難しいのですが、09 年の初演ではもっとできることがあったのでは、というような反省点もやはりあります。人品いやしからぬ立派な剣豪であり、すばらしき詩人の心の持ち主でありながら、人並みはずれた大きな鼻がコンプレックスになり想う人に恋の告白もできず、ただ愛する人に無償の愛を貫き通すシラノ。再演に当りシラノという繊細な人物をさらにきめ細かく演じてみたいと思っています。


 ロクサーヌとクリスチャンのキャストも初演時とは変り、おまけにダブルキャストです。相手が違うと当然芝居も変ってきます。それぞれの組み合わせの数だけこの芝居を楽しんでいただけるはずです。シラノの役は台詞も多く、歌も十数曲歌います。その両方をうまく組み合わせて表現する、そこがミューカルで演じる『シラノ』ならではの見せ所だと思います。低い声でしゃべっていながらスーッと高い声で歌う、台詞と歌との声の使いわけでその人物を面白く膨らませることができればと思っているのですが、それはミュージカルだからこその表現の面白味だといえるかもしれません。

 劇団四季時代の『ジーザス・クライスト・スーパースター』から数えると僕のミュージカル歴も40 年目になりますが、その間に観客へのミュージカルの浸透度は格段に変化しました。初期のころにはどこか奇異なものを見るような観客の視線も感じましたが、今は舞台と観客席とが一体となっているのを実感するにつけミュージカルが日本の土壌にも根付いてきたのではないかと思います。僕自身にとっても成長できた40 年だと信じています。ミュージカルの大きな変遷という面白い時代にミュージカルと関れたことは非常に幸せなめぐりあわせでした。

 ミュージカル、ストレートプレイといろいろな芝居を体験して芝居の面白みを実感でき芝居を続けていこうと思ったのが27 歳のころです。観客を前にして役の人物と自分自身が行き来する面白さを感じたのです。演じることをどこか冷静に客観的に見られたり、我を忘れるくらいその役そのものになっていたり、自分の精神をコントロールする面白さです。そして、僕がその芝居を楽しんでいる同じ瞬間を観客の方々にも楽しんでいただいているという共有感が俳優として一番の醍醐味ですね。

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