interview

2012年 劇団四季ミュージカル『アイーダ~愛に生きた王女~』の舞台 に立つ思いを語る阿久津陽一郎

コモレバ 2012年7月1日号  PHOTO MESSAGEより

撮影:2012年6月8日 四季劇場「秋」にて/徳増純一郎

「常に感じていられる感性を持ち、どんな役にも真正面から向き合えるモチベーションを持てる俳優でありたいと願いつつ舞台に立っています」


 2003年の初演以来のラダメス役で劇団四季ミュージカル『アイーダ~愛に生きた王女~』の舞台に立っています。日本人のための『アイーダ』をと考えたとき、敵国の女王アイーダと恋に落ちるエジプトの将軍ラダメスを演じるにあたり、あるジャパニーズヒーロー像をイメージしました。織田信長のような人物が恋をすることで人間らしく変っていくというのは面白いのではないかと、また日本の観客の方々にも伝わりやすいのではないかという解釈です。僕は劇団四季に入って今年で18 年(*撮影時)になりますが、一つの役で一番長く演じているのがラダメスで、初演以来オフの日でもいつでもオン(ラダメス)にスイッチを入れられるようなニュートラルな状態が続いている9年間です。


 歌の技量、恋した男の心情の表現力、回数を重ねることで初演時には手の届かなかった領域に少しは踏み入っているのかなと思っています。突き詰めていく時間の積み重ねを与えてくれるロングランという公演スタイルは、僕にとって切磋琢磨する場です。『アイーダ』は他のミュージカルに比べ、人物像の作り込みに関しては余地を残している作品ではないかと思っているのですが、その意味では演じ手としては車を好きなようにカスタマイズしていくような楽しみがありますし、想像力の彼方に観客の方それぞれのアイーダやラダメスが存在してもいいというのが魅力の一つになっていると思います。もちろん数々のナンバーもミュージカルの魅力です。子供のころ耳になじんだ子守唄や童謡が、言葉の内容とメロディがセットになって無意識に心の中に残っているように、言葉が心に効果的に響くものとして音楽が使われているのがミュージカルの基本かもしれません。口をついて出る、耳に残るすばらしいナンバーがたくさんあります。

 
 僕は実は芝居がやりたくて劇団四季に入ったのですが、歌もダンスも本格的なレッスンを受けたのは四季に入ってからのことで、当然、セリフをしゃべるのが一番得意だと思っていました。ところが得意だと思っていたことがこんなにもできないものかと思い知らされる連続でした。それは、得意だと思っていたことにはまだまだ先があったということで、次にストレートプレイをやる機会にどれだけセリフが語れるのかというのが、怖さでもあり楽しみでもあります。舞台というのは瞬間の芸術です。映像のように記録されるものではなく人々の記憶に残るしかありません。だからこそ僕自身にとっての1回というよりも、観てくださるお客様にとっての大切な1回だと思って舞台に立ちます。今後、語り継がれる阿久津のラダメスを精進すると共にチャンスがあるところにいつでも身を置いていられる俳優でいたいと思っています。

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