その義理堅さは、次なるエピソードにもよく表れている。
その壱は『ニッポン無責任時代』などの古澤憲吾監督が亡くなり、通夜が行われた日のこと。式に参列した俳優はといえば、なんと植木等の他には加山雄三と谷啓のみ。
このとき植木さんは、「ほかの俳優たちはいったいどうなっているんだろうな」と大いに憤ったというから、古澤への深い感謝の念とともに、その義理堅さが伝わってくる。
続いては、自分は酒など飲みもしないのに、石橋エータローが開いた店「三漁洞」(渋谷桜丘)にしばしば訪れていたこと。今も店を引き継ぐ奥様から聞いた言葉「主人は植木さんには感謝していました」からは、植木等のメンバーに対する思いやりが滲み、こちらの心まで温かくなってきたものである。
ハナ肇の『馬鹿まるだし』出演に当たり、山田洋次監督に「ハナをよろしくお願いします」と頭を下げに出向いた逸話や、犬塚弘の舞台をしばしば見に行き、助言を加えた話もよく聞くところだ。
その参。小松さんによれば、映画が一本あがると植木等は、監督などは呼ばずに助監督や小道具など若いスタッフを集めて、多摩川べりの料亭で宴会を催すのが常だったという。
「オヤジは、下っ端として走り回っている奴、いつかは監督になる奴なんかを可愛がったの」
舞台に上がるようになってからもこの慣行は続いたようだが、まさにこれは「めんどうみたョ」(塚田茂作詞、萩原哲晶作曲)の実践である。
筆者がご自宅にお邪魔した折、「さっきまで東宝のスタッフが遊びに来ていてね…」と話していたことや、共演者の田辺和佳子さんに伺った「現場に入ると必ず、照明スタッフに『今日もいい男に写るよう、照らしてくれよ!』と声がけしていた」との逸話も、まさに植木さんが持つ律義さの表れのように思える。
その四は、撮影所で親しくなった東宝俳優・久野征四郎を呼び捨てにする小松さんを叱った話。これは「自分が偉くなったと勘違いをしてはいけない。もっと律義になれ」という戒めに違いなく、その教えは確かに歴代付き人に引き継がれている。












