そもそもの発端は、本作の音楽(本家へのオマージュを込めたオリジナル・クレージーソング)から脚本にまで関わった斎藤誠氏(以降、誠ちゃん)が、「ひとし&カツヤ」ツアー(84)に加わったことだった。映画『逆噴射家族』の主題歌を広める意図もあった当ツアーにギタリストとして参加した誠ちゃんは、この間、ポール・マッカートニーと並ぶアイドル・植木等(以降、植木さん)と大いに親交を深める。
かねてより〈植木等愛〉を競い合っていた誠ちゃんと筆者が、自主映画製作構想を進める中で、植木さん本人に声をかけたのは当然のこと。ご長女・真由美さんと職場が一緒だった筆者は、誠ちゃんに聞いた電話番号をダイヤル。直接電話に出られた植木さんに「今、斎藤誠君と作っている自主映画に出ていただけないでしょうか」と、図々しくもアタックをかける。
すると、その返事は「いいよ。いつ撮影する?」という、誠に意外かつ有難いもの。
早速訪ねたリハーサル・スタジオで、「今、黒澤さんの『乱』に出ているから、阿蘇のロケに行く前に、うちの庭で撮ろう」と具体的な提案までいただいたのには、さらにビックリ。まさに「なんでこうなるの」的急展開に、嬉しいやら戸惑うやらの複雑な気分であった。
肝心なことだが、植木さんの役は「警視総監」で、その名も平均(たいらひとし)。国際的陰謀団から日本を救った、筆者演じる無責任刑事を表彰する役どころである(※1)。今思えば、いかに無責任男を「生きている限りは、やらなきゃいけない使命」と覚悟を定めていた時期とは言え、こんな役名もないものだ(※2)。