SPECIAL FEATURE

特集:植木等生誕100年企画 「お呼びでない?お呼びでない、ね。こりゃまた失礼しました!」と昭和を駆け抜けた無責任男・植木等の〝とっておき〟の話

 いよいよ撮影当日の1984年7月26日。「東京衣装」で調達した総監風の上着を身に纏い、『乱』のために習っていた乗馬用のズボンと長靴、さらには被り物まで用意してくださった植木さん。
 シナリオに目を通すや、「国際的大事件かぁ。昔、映画でハナ肇がやったなぁ。肥溜めに落ちて、それで〝コエクサイ的大事件〟!」と、マニアにしか分からないダジャレ(※3)を放っただけでなく、あらゆる台詞と動作に独自の解釈を加えるサービスぶり。


 笑いながら放つ台詞「いや、どうも、どうも!」の言い回しからは、「これまた失礼いたしました」の息遣いが感じられ、芝居の相手をする筆者は、緊張の中にもそれだけで至福のとき。まさに夢見心地の数時間と相成った。

▲1984年7月26日、世田谷区砧二丁目の植木等の自宅での撮影風景。右端が植木等。警視総監・平均役で出演の植木と握手を交わす筆者至福の一枚

「えっ、それなんだったの? オレ知らないよ!」
 拙著『今だから!植木等』のためのインタビュー時、この映画の存在に驚いた小松政夫さんの口から出たのは、次なる言葉だった。


「そういうところがオヤジさん、義理堅いんだよね」


 ここで判ったのは、植木等が〈義理堅い人間〉であるということ。
 つまり植木さんは、『逆噴射家族』のキャンペーン・ツアーで世話になった斎藤誠と、娘さんと職場が一緒だった筆者に、義理を立ててくれたのだ。そうでもなければ、こんな素人映画に天下の大スタ―・植木等が出てくれるはずはない。


「植木さんがこういうことをされたなんて信じられないです。私の頃は、そんなことは絶対になかったですから」


 こう語るのは、最後の付き人を務めた藤元康史さん(撮影当時はまだ就任前)。渡辺プロに内緒で自主映画、それも8ミリ映画に出演するなど、彼の付き人経験では到底あり得ないことだったのだろう。 小松さんの「今なら絶対ダメだよ」との一言からも、植木等の自主映画出演が奇跡のような一事だったことが改めて実感される。

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